スマートフォンから宇宙ロケットまで、対応製品は無限大です 大田区の町工場の祭典「おおたオープンファクトリー」

日本有数のモノづくりの街、大田区――――――。毎年冬に催される町工場のイベント「おおたオープンファクトリー」が11月26日から1週間の日程で開催された。これは普段中々見ることができない工場内の様子を期間限定で一般公開するという特別イベントである。初日は11月下旬とは思えない暖かな陽気のなか、多くの家族連れが下丸子・武蔵新田エリアにある町工場を訪れた。

くりらぼ多摩川くりらぼ多摩川

このイベントは地元の工業会である工和会協同組合と一般社団法人大田区観光協会、首都大学東京、横浜国立大学が共同で運営するもので、2012年からはじめて今年で6回目を迎える。また、主催者が提唱する「クリエイティブタウン大田構想」というプロジェクトを元に、大田区はモノづくりを中心とした産業振興、観光推進、都市計画の整備を行なっている。

おおたオープンファクトリーは工場を見学するだけではなく、参加者達が熟練職人の指導を受けながら、へら絞りや、溶接などの作業を実際に体験することができるイベントだ。他にも風船とストローを利用した擬似惑星探査機の作成や、町工場から出た廃材に自分の名前を刻印したりするアトラクションで訪れる参加者達を楽しませていた。

「有限会社宮崎製作所」プラスチック精密切削加工「有限会社宮崎製作所」プラスチック精密切削加工

大田区内にある工場は3,500社と都内でも最大規模を誇る。(2016年12月時点)その内の8割は機械金属加工分野が占めており、試作品や精密加工製品等が得意な企業が数多くあるのが特徴だ。また直木賞作家である池井戸潤氏の小説「下町ロケット」のテレビドラマ版では、大田区にある「株式会社桂川精螺(せいら)」の工場がロケ地にもなっている。

「大森鋼鉄株式会社」金属のバリ削り「大森鋼鉄株式会社」金属のバリ削り

町工場での作業工程は「削る」「成形する」「磨く」「メッキする」といった、一つの加工技術に特化した工場がほとんどだ。ゆえに各工場へ部品を回して一つの製品を組み立てる「仲間まわし」と呼ばれる方式をとっている。また、それぞれの工場が自転車で回れるほど近い場所にあるので、別名「自転車ネットワーク」などとも呼ばれている。その仲間まわしを使った代表事例が「下町ボブスレープロジェクト」だ。大田区の金属加工技術を結集したボブスレーがジャマイカのオリンピック代表チームに正式採用されている。2018年の平昌オリンピックでのその勇姿を見ることができるだろう。

おおたオープンファクトリーの案内所おおたオープンファクトリーの案内所

町工場で完成した製品は一見すると何の部品かわからない。しかし、私たちの身の回りの製品を分解して調べると、大田区で作られた部品が数多く採用されているのがわかる。例えばスマートフォンの主要部品や駅ホームの転落防止用ゲートの部品など、様々な製品の構成パーツとして利用されている。

参加者によるへら絞り体験参加者によるへら絞り体験

工場での具体的な加工方法としては、工作物を回転させて対象形にする「旋盤加工」と呼ばれる技法や、フライスと呼ばれる多数の切れ味をもつ刃の工具を回転させながら、工作物を加工する「フライス加工」。金属板を回転させた上で、「へら」と呼ばれる特殊な棒を押し当て徐々に変形加工する「へら絞り」と呼ばれる技法。これはパラボラアンテナや戦闘機、宇宙ロケットなどの先頭パーツを製造する時に用いられるものだ。他には鉄、アルミ、ステンレスなどを曲げたり、レーザーで穴を開けたりする「金属加工」、彫刻、研磨、3Dプリンター、樹脂加工などがある。もちろん、それぞれの加工方法で一人前になるには短くて数年、長いと10年くらいの鍛錬は必要とされている。数十年レベルの熟練工にもなると、正確な精度が要求されるそうだ。

へら絞り加工の部品へら絞り加工の部品

大田区は産業と生活が共存する街づくりを進めており、その方針から建設された工場アパートが数か所存在する。その中でも首都圏最大の工場アパートがテクノWING大田だ。開放型の広場を含む約6,500平方メートルの敷地内には、48の工場ユニットが収容可能な5階建ての工場棟と、その家族が生活する企業入居者専用の住宅が併設されている。

大田区の工場アパート「テクノWING大田」大田区の工場アパート「テクノWING大田」

また、大田区は創業者支援の一環として、廃校になった小学校を利用して、新規事業へのサポートを目的としたインキュベーション施設「BIGあさひ」を運営している。新規事業者は施設費用を格安で利用できる。ランニングコストが浮いた分、本業に集中出来るのがメリットだ。

3Dリバースエンジニアリングを得意とするテックストレーキ株式会社3Dリバースエンジニアリングを得意とするテックストレーキ株式会社

「おおたオープンファクトリー」の最終目標は日本のモノづくりの文化を地域住民に理解してもらうと同時に、若いクリエイターに向けて大田区の工場の魅力を伝えることにある。少子高齢化が叫ばれて久しい日本において、町工場の匠の技を次世代に継承するためにもこのようなイベントには十分意義があるものだ。日本のモノづくりの文化を絶やしてはいけない。

参考サイト

工和会協同組合

一般社団法人大田区観光協会

おおたオープンファクトリー

クリエイティブタウン大田構想

有限会社宮崎製作所

テックストレーキ株式会社

大森鋼鉄株式会社

くりらぼ多摩川

ひかり屋根株式会社

株式会社オースギ

@japanでは秋葉原を拠点に活躍しているアイドル橘うららさんをメインレポーターに迎えて、「おおたオープンファクトリー」のイベント様子を動画で紹介いたします。

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